私は仕事の合間の時間つぶしに「田沼町を忘れない」というブログを作って、旧田沼町の史跡や寺社巡りをして過ごしていた。
　近所に東明庵（馬頭観音）があって、子供の頃から慣れ親しんでいたのだが、たいしたものではないと子供ながらに思っていた。時折、お堂の鍵を閉め忘れてる時があって、こっそり近所の悪友と忍び込み、怖い顔をした馬頭観音を見て笑けていたりしていた。最近までここは八坂神社だと思っていたくらいだった。
　最初はかなりマイペースで、旧田沼町の写真を適当に撮って載せていた。そして幽霊で有名な須花トンネルで写真を撮ったら、訳の分からない煙が写りびっくりした。調度大正トンネルの前で、これから「馬頭観音」を見に行く途中だった。
　いろいろ馬鹿なお払いや焚きだし供養をして貰い、いろいろ考えた。田沼には人が忘れてしまいそうな歴史がたくさんあるのだろう。その歴史をできる限り掘り起こそうと思った。
　そして神社や仏閣を巡っているときに、佐野坂東三十三札所巡りというのを昔の人がやっていたというのが分かったり、その札所がまだ残っているのに気づいた。おまけに近所の東明庵のお坊さんが最初に始めたというのが分かった。それも、須花トンネルでお参りしようとした同じ馬頭観音のある東明庵の坊さんだ。

　それならば、その礼所巡りをやってみようという気持ちになった。最初は旧田沼町の番所だけでいいやと思っていたのだが、せっかくだから全部回ろうと思いついた。
　全部まわれるかどうかははたして分からないけど、全部まわってここに記録をして、さらにもう一度形ある礼所巡りをやってみようと思うのである。